こんにちは!
フルーツ王国山梨県南アルプス市で、約50年以上ぶどうとスモモを栽培し続けている私たち古郡果樹園が、栽培過程を全公開し解説していくこのコーナー!
今回は「ぶどうの芽かき」について解説していきます。
ぶどうの芽かき。
聞いたことがある人は少ないと思います。
新芽を取り除いてしまう作業である芽かきは、「せっかくでてきた新芽を取る」というなかなか勇気がいる作業で、うまくできないと躊躇してしまう人も多いと思います。
今回はそんな芽かきの方法がわからない、失敗したらどうしようと思っている人がうまく芽かきを行えるように完全解説しました。
このブログを読めば、ぶどう栽培にとって今シーズンのスタートの作業である芽かきについて完全理解することができます。
それでは解説していきます。
目次
芽かきとは
芽かきとは、たくさんでてきた新芽のうち、不要な芽を取り除き、芽の数を制限することで、貯蔵養分の無駄な浪費を防いだり育ちの強さを揃えたりすることで、高品質で、全ての房の品質が均等化されたぶどうを作るための作業です。
春先に発芽した全ての芽を残すのではなく、計画的に新芽を取り除いていきます。
これは将来のぶどうの樹の形をイメージして行なった、冬の剪定作業の延長で、実際にイメージ通りの樹型にしていく作業の一つです。
〜ぶどうの剪定についてはこちら〜
芽かきの目的
上記でも少し触れましたが、芽かきには以下の目的があります
①余分な新芽を取り除くことにより貯蔵養分の浪費を防ぐ
②新梢の勢いを整えることで房ごとの品質を均等化
③棚面の有効活用や棚面や畑内の明るさを確保できる
④風通しの良さを確保したり薬剤をムラなく散布したりすることで病害虫の発生抑制
⑤枝ごと、新梢ごとの生育が均等になり、今後の作業が行いやすくなる
それぞれ解説していきます!
①余分な新芽を取り除くことにより貯蔵養分の浪費を防ぐ
ぶどうは葉が7枚前後の成長までは昨年に樹に貯めた養分、貯蔵養分を中心に生育します。
そのため早く芽かきを行えば、養分の浪費を防ぐことができ、初期の育成を促進できます。
初期の芽かきには貯蔵養分の浪費を防ぐ効果がありますが、早期に芽かきを行なった方が良いのですが、逆に芽かきをあえて遅らせる場合もあります。
それは新梢の勢力が強すぎる時です。
芽かきをあえれ遅らせたり、控えめに行うことで貯槽養分をあえて浪費させ樹勢を落ち着かせることができます
また、新梢勢力が極端に弱い場所がある場合は、芽かきを早めに行い養分供給したい芽に養分が行くように、周りの目を早めに取り除きましょう
このように芽かきを通して、芽の勢いや新梢の勢いを調整することができます。
②新梢の勢いを整えることで房ごとの品質を均等化
ぶどうの房は新梢(春にの伸びた新しい枝)になります。
(詳しくはこちら〜ぶどうの剪定について〜)
この新梢の生育の様子や勢力の強さがそのまま房の成長と品質に影響を及ぼします。
そのため、新梢の勢力を整えることで房ごとの養分の流入を整え、品質が均等化します。
③棚面の有効活用や棚面や畑内の明るさを確保できる
芽かきを行わないと一つの節から複数の芽が誕生します。
また、ぶどうは枝の先端の方が生育の勢いが強く、新梢が伸びやすくなります。
先端の方に栄養が優先されるため、枝の基部の方や、中間の芽は栄養が行き渡りにくく、うまく新梢が成長しません。
その結果、勢いよく成長し新梢が混み合っている棚面と、うまく成長せず空いてしまっている棚面ができてしまいます。
それでは棚面を有効活用できません。
空いている棚面は不効率ですし、混み合っているところは明るさが確保できません。
④風通しの良さを確保したり薬剤をムラなく散布したりすることで病害虫の発生抑制
これは③と同じ考え方です。
芽かきをうまく行わないと棚面に混み合った場所ができてしまいます。
その結果風通しが悪くなり、病気が発生しやすくなります。
また混み合っていると薬剤散布がうまくいかず、病害虫が発生します。
病害虫対策としても芽かきは重要なのです。
⑤枝ごと、新梢ごとの生育が均等になり、今後の作業が行いやすくなる
芽かきは今後の作業にも影響してきます。
先ほども解説しましたが、ぶどうは枝の先端の勢力が強く、基部、中間にいくにつれ勢力が弱くなります。
そのためそのままにしておくと生育のスピードが異なり作業にばらつきが発生します。
例えばジベ処理の段階が新梢ごとでことなったり、房作りの段階が新梢ごとでことなったりしてしまいます。
そうなると作業が非効率になってしまったり、効果的な作業ができなかったりします。
以上が芽かきを行う目的です。
芽かきの時期
芽かきの時期は、種ありか種無し、長梢栽培か短梢栽培か、樹勢の強弱や様子で異なってきます。
それぞれの品種や地域、環境、ぶどう園の様子を見ながら行いましょう。
また芽かきは一度に行うとリスクを伴います。
残した芽が順調に成長する芽なのか、雨風で新芽が折れてしまわないか、残った新梢に養分が行き過ぎると勢力が強くなりすぎてうまく生育できなくなる可能性はないか、様々なリスクが内在します。
そのため芽かきは2〜3回に分けて行う方がいいでしょう。
次に具体的な芽かきの時期と、時期ごとの方法を解説します
芽かきの方法
具体的な芽かきの方法を回数ごとに解説していきます。
1回目の芽かき
1回目は葉が2〜3枚目の時に行います。
1回目の芽かきでは不定芽や副芽を基本的に取り除きていきます。不定芽からは将来ぶどうの房はなりません。また不定芽は極端に勢いがいいため基本的には芽かきの対象です。
この時、一つの節から複数の芽が出ていて、どちらが副芽なのか、どちらを取り除くのか迷った時はとりあえず残していきます。
2回目、3回目で最終的に選抜する芽を決めればいいですし、ある程度成長しないとわからない芽もあるためです。
2回目の芽かき
2回目の芽かきは葉の数が6〜8枚の時に行います。
この時の目的は新梢の勢力を整えることと、混み合っている箇所を整理することです。
まず新梢の勢力を整えることですが、具体的には極端に勢力が強い新梢や、極端に勢力が弱い新梢を取り除いていきます。
また勢力の調整方法としては誘引による調整もあります。
例えば、先端の新梢の勢いが強く他の新梢の勢いが弱い場合、早めに先端の新梢を誘引し勢力を落ち着かせます。
全体的に勢力が強い場合は芽かきを遅らせたり、逆に勢力が弱い場合には積極的にマカ機を行います。
次に混み合っている箇所の整理ですが、具体的には先端から2個芽を残し、3個目の芽を取り除く、次の2個の芽を残し、3個目を取り除くように行います。
つまり先端から3個目の芽と6個目の芽を取り除きます。
このように芽かきを行い混み合ったところを調整します。
またこの時点で花穂がついていない新梢も取り除いていきます。
3回目の芽かき
3回目の芽欠きは開花直前に行います。
この時の目的は棚面の調整です。
新梢の成長具合で棚面が混み合っている場合、その辺りを芽かきしていきます。
ここでは最終調整です。ここまでで計画通りの棚面が仕上がっている場合は3回目を行わない場合があります。
芽かきの重要ポイント
以上芽かきの方法でしたが、取り除いて良い新芽か残す新芽か迷った時や、芽かきを行う上でのポイントをまとめます
一回で完璧に行おうとしない
芽かきは1回目や2回目と行う時期は決まっていますが、その都度完璧に行わない方が良いです。
なぜなら成長の途中で風や遅霜などの影響で新梢が折れてしまうことがあるからです。
そのため、一回の芽かきで完璧に行おうとせず、何日か、何回かに分けて行うように心がけましょう!
重要なことは
- 一箇所から複数新芽が出ている時は、「副芽」を取り除く
- 結果母枝から発生していない新芽は「不定芽」なので取り除く
- 成長の様子を見ながら無理はせず、重要な芽のみ残していく
このことをまずは注意しながら芽かきを行います。
取り除く芽や新梢を迷った時は生え方や生えている位置に注目
一回目の芽かきでどちらが副芽かわからない時や、2回目の芽かきでどの新芽を取り除いた方が混み合いを解消できるか迷った時は、新芽や新梢の生え方に注目し判断します。
例えば、新芽の出方が上向きのものや下向きのものは勢力が強くなる傾向があるので優先的に芽かきの対象になります。
横向きに生えている新芽を優先的に残すと良いでしょう。
また芽座に遠い方は優先的に芽かきの対象とします。
これは芽座に近い新芽の方が誘引の際折れにくいからです。
このようにどちらの芽を芽かきの対象とするか迷った時は新芽の生え方や生えている位置に注目し芽かきの対象を選定しましょう。
先端と基部側で成長の差が激しい時は調整する
ぶどうの樹は頂芽優勢とい属性があります。
これは枝の先端の方が成長しやすいという性質です。
このままでは枝の先端ばかり成長してしまい、基部側はなかなか成長しなくなってしまいます。
そこであまりにも成長の差が激しい時は思い切って先端の新梢を取り除いてしまいます。
そうするとそれより基部側に栄養が周り成長の勢いが増していきます。
まとめ
今回はぶどうの芽かきについて解説してきました。
芽かきとは、たくさんでてきた新芽のうち、不要な芽を取り除き、芽の数を制限することで、貯蔵養分の無駄な浪費を防いだり育ちの強さを揃えたりすることで、高品質で、全ての房の品質が均等化されたぶどうを作るための作業です。
芽かきを行う目的は以下の通りです。
①余分な新芽を取り除くことにより貯蔵養分の浪費を防ぐ
②新梢の勢いを整えることで房ごとの品質を均等化
③棚面の有効活用や棚面や畑内の明るさを確保できる
④風通しの良さを確保したり薬剤をムラなく散布したりすることで病害虫の発生抑制
⑤枝ごと、新梢ごとの生育が均等になり、今後の作業が行いやすくなる
具体的な内容は各章で解説していきました。
芽かきは1回で全て行うのではなく、何回かにわけて行います
そしてその段階で芽かきの方法は異なります。
1回目の芽かきは葉が2〜3枚目の時に行います。
この時は「副芽」と「不定芽」が芽かきの対象になります。
2回目の芽かきは葉が6〜8枚目の時に行います。
この時は、新梢の勢力を整えるため、そして混み合っている箇所の解消のために芽かきを行います。
そして3回目の芽かきは開花直前に行います。
誘引作業とともに最後の調整です。
棚面の間隔などを誘引しながら調整していき、混み合っている箇所は芽かきを行います。
これらが芽かきの時期と方法でしたが、重要なポイントは以下の通りです。
①一回で完璧に行おうとしない
②取り除く芽や新梢を迷った時は生え方や生えている位置に注目
③先端と基部側で成長の差が激しい時は調整する
芽かきは将来のぶどうの品質に影響を与える大切な作業です。
最初のうちはもったいなくて芽を取ってしまっていいのか不安になると思います。
ここは思い切りが重要。
他の芽に栄養がいくように、高品質で均等化されたぶどうを作るために大胆にそして計画的に行いましょう!
4ヶ月後立派なぶどうが成っていることをいのって。
〜シャインマスカット・藤みのり・ピオーネなどオンライスとははこちら〜
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