こんにちは!
フルーツ王国山梨県南アルプス市で、約50年以上ぶどうとスモモを栽培し続けている私たち古郡果樹園が、栽培過程を全公開し解説していくこのコーナー!
今回は「スモモの摘果」について解説していきます。
※今回は特に「貴陽」について解説していきます。その他一般的なスモモについてはこちらをご覧ください。
〜プラムの摘果!残るは1割未満?〜
スモモは受粉に成功し結実した実全てをそのまま育て収穫するのではありません。
摘果はいわば「スモモの選抜試験」になるのです。
しかし実際に摘果を行おうとしてもどの実を残しどの実を落とすのかわからない。
落としてしまうのは勇気が必要でうまくできない。
そんな不安にお答えしていきます。
このブログを読めば貴陽の栽培においてメインの作業「摘果」について理解できます
それでは解説していきます。
目次
結実するかどうか。まず初めの試練。
受粉作業が終わり2〜3週間ほどたつと、実がなっているかどうか確認できるようになります。
受粉が成功し、実がなることを「結実」と言います。
スモモ栽培においてまず初めの心配事は、しっかり受粉できているか、結実に成功しているかどうかです。
特に近年は地球温暖化、暖冬化によって開花が早くなっております。
そのため開花した後霜が降りたり、雪が降ったりするリスクが高くなりました。
実際2020年は開花後の積雪、2021年は開花後凍霜害の発生など、スモモの花にとって過酷な状況が続きました。
結実率は大幅に下がり、より一層の受粉作業の徹底化、効率化が求められるようになりました。
そのため、結実するかどうか、ここがスモモにとっても初めの大きな壁です。
特に貴陽は結実率が低いためなおさらです。
この危機を乗り越えて貴陽は実をなしました。
全ての実を育てない?摘果とは
貴陽ををじめとするスモモは、結実した実を全てそのまま成長させるわけではありません
「摘果」という作業をし、実の量を調整していきます。
結実した実を全てこのままにしておけば、多くの貴陽を収穫できるかもしれません。
しかしそれでは美味しく高品質な貴陽はできないのです。
実が多くなると、養分が分散してしまい、サイズが小さくて果肉が少なし貴陽に育ちます。
それだけでなく、味は薄く甘味が少なくなり、酸味やえぐみが強い貴陽に育ち、とても美味しいとは言えない貴陽になってしまいます。
そこで「摘果」を行い、実の数を調整し、養分を集中させることで、美味しく高品質な貴陽が育つのです。
なぜ実を落とすの?摘果の目的
先ほどを解説した通り、摘果の目的は
- 養分を集中させ、甘く美味しく、高品質な貴陽を作ること
- 変形している実や傷がある実などを取り除き品質を均等化すること
- 適正な実の数にして、一つの実を肥大化させること
です。
そのために結実した実の中から残すものを選抜し、それ以外を落としていきます。
いつ?摘果の時期はここ
後ほど摘果の方法でも解説しますが、摘果は基本的に「予備摘果」と「本摘果」の2回に分けて行います。
品種ごとに回数や方法は異なりますが、基本的には2回に分けます。
貴陽の場合は、他のスモモと異なり、傘かかけをおこなうため、その時に2回目の摘果である「本摘果」を傘をかけながら行います。
今回は冒頭で記述した通り「貴陽」の摘果についての解説です。
1回目の摘果
1回目は結実した実の大きさが大豆サイズより一回り大きくなった時に行います。
大体満開時より30日後くらいになります。
このくらいになると、受粉が成功ししっかり結実した実とそうでない実とで判別できる状態になります。
実際は、環境や気温等に影響されるため日数は目安に過ぎないのですが、しっかり結実したかどうかがわかりやすくなったら速やかに行いましょう。
何故なら、なるべく早く摘果することで、養分の無駄な浪費を防ぐことができより甘く大きく育つからです。
2回目の摘果
一般的なスモモの場合、2回目の摘果は、1回目の予備摘果が終わってから15日〜20日後に行います。
貴陽の場合は「傘かけ」を行いながら、本摘果や仕上げ摘果を行います。
そのため他のスモモとタイミングが異なります。
貴陽の傘かけのタイミングは「果梗(柄の部分)が1センチ程度のなる5月下旬から6月上旬ごろに行います。
この傘かけは早くても遅くてもいけません。
まだ表面が繊細である早い時期に傘をかけてしまうと、強風で傘と実が擦れ実に傷がついてしまいます。
逆に遅く作業をすると、実が大きくなりすぎて作業効率が悪くなってしまいます。
また傘の役割は雨からみを守るためなので、雨がよく降る梅雨の前には傘かけと本摘果は終えたいです。
貴陽の摘果の方法を解説
今回は貴陽の摘果について解説していきます。
ソルダムやサマーエンジェル、太陽、大石早生などその他の品種についてはこちらをご覧ください。
〜プラムの摘果!残るは1割未満?〜
1回目の摘果!予備摘果はなぜ必要か
貴陽は他のスモモと異なり一度の摘果で一気に落ちしたり、実と実の距離感などを意識して行いません。(他のスモモは1回目の摘果から実と実の距離を15センチ間隔で摘果していきます)
貴陽の場合、間隔を確保する摘果は傘かけと一緒に行う本摘果の時に行います。
理由は以下の通りです。
- 将来的に大きく形がいいものを残すために、ある程度成長してから出ないと比較ができない。
- 「世界一重いスモモ」としてギネス認定されている貴陽。その重さゆえ風で落ちるリスクが高く、ある程度成長してからでないと果梗の太さや丈夫さがわからない。
- 繊細なスモモであるため、傷がつきやすかったり変形して成長しやすかったりするため、いい形や傷がない貴陽を残すためギリギリまで残しておきたい
- 他のスモモと異なり、貴陽は一玉一玉傘をかける作業があり、その時に仕上げの本摘果をするため、今回だけで将来残す実を選定する必要がない
以上です。
そのため、貴陽の摘果では他のスモモの摘果とは異なる選定基準で行います。
貴陽の予備摘果の選定基準
貴陽の予備摘果ですが、適当に残す実を決めているのではなくしっかりとした基準があります
- 受精に成功し大きく膨らんだ実は残し、結実に失敗して小さいままの黄色い実は落とす
- 下向きの実は残し、上向きや場所が悪いところ(枝の間)などの実は落とす
- 葉スレや枝スレで傷がついていたり、形がいびつな実は落とす
- この後の傘かけを念頭に傘がかけにくい実は落とす。
以上が判定基準になります。
この基準をもとに、1つの箇所(節)から2つ以上実がなっているところは1つの実に絞り、実の数が多く混み合っている場所は実の数を調整していきます。
最終的には本摘果で10センチ~15センチ間隔で実がなるように摘果をします。
上記の中で解説が必要なものは二番目の実のなってる向きだと思います。
何故、下向きの実を残し、上向きの実を落とすのかというと、理由は3あります。
- 傷がつきやすい
- 日焼けしやすく糖度が乗らない
- 果梗(実と枝が繋がっている部分)に負担がかかり実が落下しやすい
貴陽の摘果は今回だけで終わらず、傘かけの際に最終仕上げの摘果をおこないます。
その時に他のすものように実と実の間隔を考えます。予備摘果では意識しません。
基本的な判定基準を解説しましたが、一番大切なのは将来を予測し、この実は将来大きく育つのか、美味しくなるのか、風に強いのか、綺麗な形になるのかを考えながら行うことです。
その上で上記の基準を参考にしてみてください。
本摘果(仕上げ摘果)
貴陽は傘かけが必要なスモモです。傘かけは雨と太陽から守るために行います。
傘かけについてはこちらで解説
果梗(実と枝が繋がっている部分)が1センチ程度になった時、傘かけと同時に本摘果を行います。
大体1回目の摘果が終わって20日後くらいで5月上旬に行うのが通例です。
本摘果では最終的に残す実を決めます。
具体的には
一つの枝から成っている実と実の間隔を15センチ程度空けることを意識して摘果していきます。
その時の基準として
- 育ちが悪く小さい実を優先して落とす
- 傷がついていたり形が悪かったりするものを優先的に落とす
- 予備摘果の際の見落としを見直す
です。
実の数を少なく制限すればそれだけ1つの実に栄養が集中して美味しく高品質な貴陽に育ちますが、その分果樹が少なくなり最終的な収穫量が少なくなってしまうことや、雨や風、病気によって落下してしまい収穫時まで生き残る実が減るリスクが大きくなってしまいます。
このように摘果をし、最終的には実と実の距離を10~15センチ間隔になるように仕上げていきます。
まとめ
今回は貴陽の摘果について解説してきました。
貴陽ををじめとするスモモは、結実した実を全てそのまま成長させるわけではありません
「摘果」という作業をし、実の量を調整していきます。
摘果の目的は
- 「養分を集中させ、甘く美味しく、高品質な貴陽を作ること」
- 「変形している実や傷がある実などを取り除き品質を均等化すること
- 「適正な実の数にして、一つの実を肥大化させること
です。
摘果は基本的に「予備摘果」と「本摘果」の2回に分けて行います。
それぞれ摘果の時期と方法は各章をご覧ください。
きっと摘果を行ってみるとどの実を残し、どの実を落としていくのか迷うと思います。
そこでこの記事では剪定基準をわかりやすく解説しました。
貴陽などスモモは一玉一玉向き合うことが重要です。
愛情を注ぎ、気持ちを込めていく。このことが一番大切な栽培方法です。
一玉に込めた想いが甘さ美味しさに繋がります。
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以上貴陽の摘果作業の解説になります。
最高級貴陽を是非一度食べてみてはいかがですか?
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